請負契約・派遣契約における労務管理の基礎知識

スポンサーリンク

企業における労務管理の重要性の高まり

会社勤めのサラリーマンであれば正しく労務管理を行うことは、労働者としての権利を主張する上での基本事項になります。また会社側の立場で管理監督する管理職者であれば法律や社内の就業規則やルールにて定義されている内容を理解して職場で日々きちんと管理・運用することが求められます。

最近は、政府の働き方改革や過労死などの社会問題として、労働時間についての議論が盛んに行われています。また退職した従業員からの残業代未払いや労務条件の偽り(偽装請負)などの訴訟によるリスクも企業は抱えており(弁護士の過払金の次の飯の種になっていると聞いたことがあります)これまでよりも厳格に労務管理を行うことが社会からの要請としても肌感覚としても感じていることでしょう。

時間外労働の上限規制について労働基準法の改正が予定されていますのでその概要を整理するとともに、労務管理における基礎知識を整理します。
管理人は、IT企業で管理職をしてますのでプロジェクト型業務における要員調達の観点から派遣労働者の労務管理や請負契約といったことにも触れています。

請負契約/派遣契約

労働基準法の改正(派遣労働者の上限規制)について

働き方改革関連法案の施行に伴い労働基準法が改正されます。「労働時間法制の見直し」と「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」の2つが改正のポイントとしてあげられています。

労働時間法制の見直しは、長時間労働を防ぐことを目的としており残業時間の上限規制が設定されることが一番大きな改正ポイントとなります。現行法では残業時間の法令上の上限はなく、行政指導までの対応だったのが労働基準法として法律による上限が設定されることになります。

自分や部下の労働時間管理もそうですが、派遣労働者を管理している方は時間外労働の上限規制について概要を理解する必要がありそうです。

● 施行日 
   大企業 :2019年4月
   中小企業:2020年4月
● 概要
   残業時間の上限は原則、月45時間・年360時間
   臨時的な特別の事情がなければ上記の超過は不可
   臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも 、以下が上限
   年720時間 複数月平均80時間(休日労働を含む)
   月100時間 (休日労働を含む)
   月45時間を超過できるのは、年間最大6か月

業務委託契約と派遣契約の違い

IT業界の中でも情報処理サービスを仕事としている場合には、規模の大きな仕事も多く関連企業や下請け企業までを含めたくさんの人が関わることも多いかと思います。システムインテグレーター(SIer)と呼ばれる、主に情報システムの設計、開発、運用、保守を担う企業における労務および契約管理についての基礎的なことを整理します。

クライアントとなる企業の実現したい業務要件の情報システムを設計・開発する際には、準委任契約や請負契約といった業務委託契約を締結して対価を得ています。一方で自分の会社で仕事の完遂が難しい場合は、別の会社へ一部作業の実施を委託することがあり、その際にも準委任契約や請負契約を下請けの会社とも締結します。よって契約を考える場合には、どの会社間についてのものかを意識する必要があります。準委任契約と請負契約ではその契約の目的や責任範囲が異なるので、下請け業者との契約は、自社と顧客との契約と原則同じ形態で行うことが一般的な考え方になります。損害賠償範囲なども同じにしておくことでリスクを分散するという考え方になります。

業務委託契約とは(準委任契約と請負契約の違い)

業務委託契約とは、自社では処理できなかったり他社の方が効率的に成果が出せる業務について任せるための契約になります。情報システムにおける業務委託には、一般的に準委任契約と請負契約の2種類の契約が存在します。

自社で担うべき仕事を他社へ委託する訳ですから、 達成すべき仕事の目的や成果を中心においた契約といえるでしょう。 契約を行うタイミングで最終成果物となるものが明確に定義されており、客観的に完成が判定できるかどうかといったことでいずれの契約が妥当かということが判断されます。

請負契約には、仕事の完成義務が発生します。完成を客観的に判定するために目的物の引き渡しが行われます。目的物を成果物としてあらかじめ契約時に明記しておき成果物の検収をもって仕事の完成と評価されます。また成果については、瑕疵担保責任も一緒に発生します。一方の準委任契約は、善良なる管理者としての注意義務はありますが、 一般的には仕事の完成は発注側との共同作業としてとらわれることが多く完成が対価の条件にはなりません。契約期間における役務に対する対価という判断が法律的にはされます。

経済産業省の情報システムのモデル取引・契約書

経済産業省では、 情報サービス・システム取引に係るユーザ・ベンダ間のモデル取引・契約書の策定を通じ、契約事項の明確化やユーザ・ベンダ間の取引関係等の可視化について取り組んでいます。その中で情報システムに関する取引においては、契約はフェーズ単位に分割して締結して業務要件やシステム仕様が明確になってきた段階で見直しをして適切な取引を行うことのガイドラインを示しております。その中で各フェーズにおける作業工程での契約形態とモデル取引と契約書のひな型としてホームページ上で公開をしております。

参考までに「情報システム・モデル取引・契約書」でのフェーズの分類と契約類型を表にしてまとめました。

フェーズ仕事内容推奨契約形態
企画・要件定義システム化の方向性準委任型
システム化計画準委任型
要件定義準委任型
開発システム外部設計準準委任型・請負型
システム内部設計請負型
プログラミング請負型
単体テスト請負型
システム結合テスト請負型
システムテスト準委任型・請負型
受入・導入支援準委任型
運用運用テスト準委任型
運用準委任型・請負型
保守保守準委任型・請負型

派遣契約とは

業務委託契約は、自社で担うべき仕事を他社へ委託する訳ですから、達成すべき仕事の目的や成果を中心においた契約といえるでしょう。一方派遣契約は、労働力を提供することを目的としており、その人の行う作業そのものを中心においた契約といえます。つまり仕事の成果は、派遣先側つまり仕事を発注する企業側に責任があり仕事を受ける企業には成果についての責任はありません。

つまり指揮を受けた上で仕事を行うため、発注側企業から見ると自社社員と同じ境遇にあることを理解しましょう。そのため派遣契約の労働者についても自社社員と同様に管理者による労務管理が必要になります。

コメント