請負契約・派遣契約における運用面での注意事項(労務管理)

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請負・派遣契約の違いを理解するための具体例

労務管理の基礎知識で説明した内容について、実務における注意事項や具体的案管理のポイントについて説明したいと思います。

請負・準委任契約における検収処理

請負契約では、成果物に対しての検収を顧客より取得しなければ請求処理を行うことができません。完成責任の評価は成果物によって判断されることになります。よって成果物が完成に至っていない場合は、対価を得ることができません。また検収までにかかる期間をあらかじめ見込んで成果物を納品することが必要になります。

一方で準委任契約では、仕事の実績に対して対価を要求することができます。検収は、作業報告書などによって依頼をします。準委任契約においては仕事の完成責任はありませんので仕事の未完成を理由に対価の支払いを拒否することはできません。準委任契約の中でも成果物を定義することも可能ではありますが、成果物が完成に至っていないことを理由に検収手続きを放棄することはできません。とはいっても何らかの理由で予定通りに仕事が進んでいない場合には、その事実が判明したタイミングで契約元と一緒に対策を講じることが必要になりますし、その活動を行うことが当然求められます。(善良なる管理による注意義務)
善菅注意義務違反を理由に対価がもらえないといった事例や判例もよくあるケースになりますので、契約形態に関わらず先をみた管理(仕事が完成するのかどうか、期待された成果を残すことができるのか)はどんなプロジェクトでも重要になります。特に情報システムなど目に見えない形のものに対する対価を要求する場合には、常に契約の当事者同士で定期的にコミュニケーションをとり期待値を確認する活動が求められます。

派遣契約では、労働力を提供する目的から労働時間に対する契約になります。検収時には、始業時間、終了時間、休憩時間から客観的に計算される値(労働時間)によって対価は決定されます。契約内容によって必ずしも単価×時間で計算される訳ではありませんが、 労務管理の観点から勤務日数や時間については客観的な記録が求められます。

設計不備についての瑕疵

準委任で外部設計を実施したが、後工程で設計不備が発見された。この不備の修正にかかる費用の負担(瑕疵対応)は契約上は負う必要はありませんが、不備の内容によっては、委任された仕事を行うプロ(専門家)として妥当だったのかどうかという理由から顧客へ追加費用を請求しにくいので自社で費用を被るといったことはよくある話ではないでしょうか

仕事における指揮(指示・命令)

仕事における指揮権(指示や命令)は、業務委託契約においては、 請負契約でも準委任契約でも同じで、仕事を請け負った会社(請負先)にその権限があります。仕事の発注先が請負先の担当者に対して直接仕事の指示をすることはできません。情報システムの仕事における要件の変更や相談といった内容についても請負先の責任者を経由して依頼や調整することが必要になります。個人ではなく契約している会社に対して依頼・調整をする必要があるということです。

よって仕事の進捗が遅れているからといって、発注元が委託先の担当者へ直接残業や休日出勤を依頼することはできません。遅延に対しては、定例の進捗会議等において委託先の責任者に対して対応策についてのレポートを求めるなどのアクションをすることで事態の打開を図ることになります。これらの仕事に対する指揮については準委任でも請負と考え方としては同じです。

一方派遣契約の場合は、派遣労働者の仕事の管理義務は発注先にあります。よって派遣契約の場合には、仕事の指示を行うことが必要になります。仕事の管理をする必要があることから派遣労働者の労務管理については発注先で行う必要があります。ただしこの場合でも残業や休日出勤の依頼についてはあらかじめ決められた依頼ルートにて別途事前に行う必要があります。ただし契約時に取り決めた内容に含まれる場合はこの限りではありません。

派遣労働者の労務管理のポイント

労務管理として行うことは、仕事の指示をすることと同時に労働者の勤務実態を把握して契約時に取り決めた内容を確実に守ることが求められます。ここで言う契約時の取り決め内容とは、以下の様なことを指します。
契約時の取り決め内容
   ・ 勤務時間(始業時間、終了時間、休憩時間)
   ・ 就業場所
   ・ 業務内容
   ・ 残業可能時間

残業可能時間は、派遣労働者が派遣元の会社と結んでいる契約に則った時間で管理する必要があります。派遣先(自社や顧客)で決められた時間ではありません。36協定と呼ばれるもので、1か月、3か月、年間の限度時間の他に1日の限度時間や休日勤務が可能な日数なども定義されています。派遣元の36協定の内容はよく確認しましょう。間違いやすい事項として、休日勤務においては残業はできません。また振替休日を取得することを前提にした場合は休日の勤務だったとしても休日勤務ではなく通常日の勤務とみなされます。

ほとんどの企業で、特別条項の適用によって上限時間を緩和させることができる場合は多いですが、労使との事前協議が必要といった社内手続きを定義している場合も多いので、上限時間を超えるような勤務形態になりそうなことが予想できる場合には、早めの調整が必要になります。また休憩時間についても、労働基準法にて6時間以上勤務した場合は45分以上8時間以上勤務した場合は1時間以上取得することが必要になることも認識しておく必要があります。

契約時の取り決め内容として事前に合意していない事項が発生した場合には、派遣労働者へ直接指示・依頼するのではなく派遣元管理者へ事前承諾を得ることが必要になります。 例えば就業場所として取り決めにない場所へ出張が必要になる場合や、早出して取り決めた就業時間前の会議に参加することが必要になった場合にも事前承諾が必要になります。また取り決め内容通りに正しく勤務していることを「就業実績通知」として月1回以上派遣先責任者から派遣元責任者へ報告することも派遣法にて規定されています。

その他派遣契約における豆知識

派遣として受入できない人

派遣法にて、以下に相当する人は派遣契約で受入してはいけないもしくは、派遣してはいけないケースとして禁止されています。

・ 経営者:派遣契約で受入ができるのは、派遣元会社の従業員であることとなっています。役員も経営者にあたるかどうかについては、役員の実態上の契約形態(※雇用契約か委任契約か)に拠ります。雇用契約であれば従業員とみなされます。
・ 派遣元の派遣受入:いわゆる2重派遣に相当し禁止されています。
・ 退職者(1年ルール):退職後1年以内の元従業員を派遣で受入することは禁止されています。ただし、60歳以上の定年退職を除く。
・ 出向者 : 派遣元企業に出向者として従事している人も、出向元が雇用主であることから2重派遣とみなされることがあります。

3年を超える派遣勤務

同じ職場・部署で有期雇用派遣社員として働ける期間は、最大「3年間」までとなっています。このルールのことを「(通称)派遣3年ルール」と呼びます。引き続き同じ職場・部署で働きたい場合には、正社員・契約社員・無期雇用派遣社員など、雇用形態を変更する必要があります。
連続して3年以上同じ職場で働いている派遣労働者がいた場合には、派遣元との雇用形態も確認する(有期雇用か無期雇用か)必要があります。

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